ヤッホー!!編集者の水野琴美です。時代の潮流や価値観が急速に変化していますね。私は季節の移ろいを愛でることで心と体を整えています。恵那山を崇拝の対象としていた旧恵那郡を『ゑな』と表現し、二十四節気とともにモノ・コト・ヒトと繋がり、令和の時代の結を綴ります。
恵那・中津川の冬至
一年でもっとも夜が長いとされる冬至。冬将軍が到来し、真冬の寒さを感じます。冬至は太陽の力が一番弱まった日であり、この日を境に再び力が甦ってくるという前向きな意味合いを含んだ言葉なのだそう。私はそんな意味も含めて冬至からこの連載をスタートしました。 冬至を境に運も上昇するとされているので、かぼちゃを食べて栄養を付け、身体を温めるゆず湯に入り、無病息災を願いながら寒い冬を乗りきりたいです。
寒さの厳しい冬の夜、澄みきって見える月を表現した言葉に「月冴ゆる(つきさゆる)」という言葉があります。寒い日は空気が澄んでいて、空に浮かぶ月や星が、普段よりも鮮明になります。山間部の凍てつくような寒さの中、吸い込まれるような美しい月の光に魅了されます。
菊ゴボウ、一枚の皮
そんな月明かりの下、暗く細い道をゆっくり進む夜のバスは、車内がこうこうと明るく、幻想的でした。夜が暗いことも、空が広いことも、ここで暮らす強みになるのだと思いました。
二年前、この連載で初めて取材したのが菊ゴボウ。何も知らない私に「変な奴」と紹介してくれたのは『Koike lab.』の小池菜摘さんです。この菊ごぼうは飛騨・美濃伝統野菜の1つ。 地域によってはヤマゴボウ・アザミゴボウなどとも呼ばれる山菜ですが、岐阜県恵那市・中津川市で栽培されたものを菊ゴボウと呼びます。 ゴボウとは異なる作物ですが、見た目がゴボウに似ていることと、断面の模様が菊の花に似ていることから菊ゴボウと呼ばれるようになりました。
この菊ゴボウを「変な奴」と呼ぶのには、いくつかの理由があります。出荷するまでに三年の試行錯誤を費やした背景。生産性を上げる、機械化するという時代の潮流から全く逆行している完全な手作業。霜の声が聞こえてからフォークで丁寧に掘り、葉と無数の根っこをハサミで切り、サイズごとに分けて選別。何故そんな手間をかけるのか疑問に思う農業人も多いようです。その理由は一枚の皮。機械で洗えばこの皮が剝がれてしまう。この皮にあの独特の香りがあり、特有の旨味を感じ、昔ながらの味を追憶するのでしょう。
そんな菊ゴボウを人々はどう調理するのだろう。お酒は何と合うのだろう。食べたことない人は何と言うのだろう。「変な奴」は二年経った今も知的好奇心を刺激するのです。
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