NPO法人「さとはち」代表 安藤美咲さんの今までとこれから

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安藤美咲さんは大学生ながら「NPO法人さとはち」の代表。農業に不可欠で、環境のバロメーターでもあるミツバチと農地、自然環境が調和した里山づくりと、持続可能な農業を目指した活動をする。「里」と「蜂」を守るための活動を本格化させたきっかけは何だったのでしょう。

美咲「高校の授業の中で、蜜蜂による授粉が農作物の生産や、森林の生物多様性維持に貢献していること。耕作放棄地の増加によって蜜蜂のたべものが減少していること。水稲栽培で使用される農薬により蜜蜂が被害を受けていることを知ったんです。蜜蜂の生育環境を良くして、蜂と人とが共生できる里山を目指したいと思いました。行政、地元企業、学校で3者連携を組み、「恵那市の耕作放棄地利活用モデル事業」として活動がスタートしました。その後モデル事業に携わった卒業生で法人を立ち上げまた。現在さとはちで販売している「恵蜜(めぐみつ)」や「生えごま油」は高校での活動の頃に誕生したものなんです。」

恵那農業高校での課題研究で行っていた里山保全活動がいまも美咲さんの軸にある。しかしNPO法人の活動となると当時の美咲さんには迷いがあった。進学が決まったばっかりだし大学からは遠いけど大丈夫かな?活動の継続、発展のためには幅広い世代が活動し、長期的な取り組みができる体制が必要?ミツバチの減少によって引き起こされる問題は住んでいる地域に関係なく、ひとりひとりが解決に取り組むべき問題?自問自答を繰り返し、最後はこれまでの先輩が積み重ねてきた活動記録と、お世話になった地域の方々の顔が頭をよぎり設立に踏み切ったという。活動は順調で2020年には第二回農業アクション大賞最優秀賞を受賞。「恵蜜(めぐみつ)」や「生えごま油」もいろんなショップで販売されているのを見かけます。そんなさとはちの活動に突き当たる壁はなかったのだろうか?

美咲「それは…今まさにといった感じです。さとはちは今年で3年目を向かえるんですけど、起業は3年目が分岐点といわれますよね。実際そのとおりだなと思うんです。授業の一環ではなくなったことで幅広い活動に取り組めるようにはなったんですが、その分運営面の課題も多いなって。学生だった仲間が就職していたり、恵那から引っ越したり、ライフスタイルの変化もあります。今年からエゴマの面積を減らすんです。私自身一年後に就職を控えているので課題です。今まで地域のボランティアの人が中心となって下さっていたけど、こちらが巻き込んでいくことを考えきれてないところあるのかなって。3年という節目を機に、改めて検討したいって思っています。」

それらも踏まえ、これからのさとはちではどんな情報発信を考えているのでしょう?

美咲「蜜蜂に対するイメージをプラスに変えたいですね。SDGsや環境保全の流れもあり蜜蜂が人に与える印象は良くなってきていると思います。一方で「こわい」「刺す生き物」というマイナス面の印象も根強いように感じるんです。でも農業や自然環境との関わりに目を向けると、果物を始め多くの農作物が蜜蜂の授粉のおかげで実をつけています。また、森林に生息する野生植物を見ると昆虫による授粉を必要とする虫媒花(ちゅうばいか)が多く、蜜蜂は農業や自然環境にとって必要不可欠。性格も温厚で、刺激しなければ刺される心配も少ないんですよ。前回、岐阜市で蜜蜂についての講演を行った際、参加者の方の蜜蜂に対して抱く印象がプラスに変化したのを目の当たりにした際には、嬉しさや達成感を感じたことを今でも覚えています。今後も、蜜蜂の生態について正しく情報発信することで、蜜蜂の印象をプラスに変えていきたいと思います。」

そしてエゴマはシソ科の一年草で歴史は古く、縄文時代から食べられていたといわれているそう。エゴマにはα‐リノレン酸という人間にとって必須の脂肪酸がたくさん含まれ健康食材としても注目されている。他にもイノシシなどがエゴマの葉っぱのにおいを嫌い、野生動物による獣害を受けにくい作物としても注目されているらしい。気付いたら私はエゴマの種を購入できないか聞いていた。

美咲「種の販売は、今後の実現に向け検討しています。種を蒔いたり花を咲かせたり、ひとりひとりの行動へと繋がる活動がしていきたいって想っていたので、そう言ってもらえて嬉しいです。」

目を輝かせてそう話す美咲さんの想いは、さとはちの「里」と「蜂」を守る想いそのものではないでしょうか。

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