恵那山麓のふもとからの寄稿 第一巻

寄稿

NPOeゑな 曽我はづき

《ゑな》と書いて、「ウェナ」と読みます。

私たちNPO法人ゑなは、苗木藩主遠山家邸宅(以下遠山家)の保全活動を行っています。

 恵那山の由来は、「その昔、天照大御神の胞衣(ヱナ。胎盤やへその緒)を納めたことからきている」と、知ったのは、二十代後半になってからのことでした。このことは、都会へ行きたい、海外で働きたいと、外へ外へと向いていた私の意識を、内側に向けるきっかけとなりました。恵那市明智町出身の私は、まだ恵那郡だった時代から、何となく「恵那」という地名は気に入っていました。そしてその意味を知ることで、これまで何もないと思っていた地元が、「実はすごいところなんじゃないか」と思い始めたのです。

 それからというもの、私は全く興味のなかった地域の歴史や文化を調べることに夢中になりました。この地域に連綿と受け継がれてきたものを感じると、「ここに生まれてよかったな」という想いが芽生えてきました。そして、これからの人生をどう生きていこうか、自分にできることはなんだろう…と自問自答する中で、それまで自分が関わり続けてきた教育の分野が、やっぱり私にとってやりたいことなんだと気付きました。

 私が理想とする教育環境は、子どもたちの周りに、人生を楽しんでいる大人がたくさんいること。そして、そこで育った子どもたちが、その地域の担い手になる為には、大人たちが自分たちの住む土地に誇りや自信をもって暮らしていることが必要だと思うのです。

 そんな想いを共有できる主人と出逢い、中津川に嫁いできてから、恵那山はさらに身近になりました。毎日眺める度に、「あぁ、この土地はずっと恵那山に守られてきたんだ」と思うと、「ありがとう」と手を合わせたくなるし、遠出をして帰ってきたとき、恵那山が見えると「ただいま」と言いたくなります。そして、それはきっと私だけではないと確信していました。今も昔も、この地域の魅力は、常に恵那山とともにあると感じていました。

 そして、地域の神話や歴史を学び、新たな魅力を発掘する「恵那山すごいぜ!!の会」を立ち上げました。三年間の活動の中で、地域を大切に想う仲間と巡り逢いました。

 そんな中で、舞い込んできた、遠山家が売りに出されたというニュース。私たちはいても立ってもいられなくなりました。というのは、苗木藩主遠山家のルーツを辿れば、「あの遠い山を治めよ」と、遠い山=恵那山を指して派遣された人たち。それは、始まりとしては、土着の人々を統治する役割だったとしても、その後、その土地に根を張った結果、地元民から、遠山様と慕われ続けた、その土地を代表する殿様になったのです。つまり、遠山家=恵那山と言っても過言ではないのです。

 当時の人々にとっての藩主とは、藩の中心人物であり、真ん中が据わっているからこそ、地域の輪ができ、その土地が治まる…そんなまちの作り方を、日本人はしてきたのではないかと思うのです。

「何とかして遠山家をまもりたい」その一心でNPO法人ゑなが立ち上がりました。

それは、これまで守ってもらった恵那山への恩返しでもあるかもしれません。

今度は私たちが、胞衣(ゑな)になりたい。そんな想いで名付けました。

 現存する遠山家の建物が建設されたのは、明治末期のことです。幕末から明治にかけては、日本にとって激動の時代だったといいます。この地域でも、日々目まぐるしくあらゆる変化が起きました。私が現在住んでいる坂下町では、廃仏毀釈によって二つのお寺が廃されただけではなく、二百あった神社がひとつにまとめられたとありました。昨日まで信仰していたものが、あるとき急になくなる…当時の人々はどんな想いだったのだろうと思うと、いたたまれない気持ちになります。そんな時代を経た人々が、それでもなお、殿様が住む場所として用意したのは、日本庭園のある日本家屋。そして、武士の権威を表すという書院造の別館でした。西洋化が進む中で、敢えてこの建物を残した当時の人々の想いを、現代の私たちがどう紡いで未来に繋ぐかはとても重要です。

 遠山家の保全活動を始めて、今年の冬至で丸二年になります。毎月十日と二十日を作業日として、沢山の方々に支えられながら、清掃や環境整備を進めてきました。私たちはここを、日本古来の精神性が学べる場所として後世に残していきたいと考えています。「まもる」とはどういうことか…常に問い続けながら、新しいいのちをここからうみだしていきたいです。

wenayui は恵那、中津川に移住定住して下さった人々のなりわいに感謝したい、応援したいというおもいがあります。また、ここで産まれた人々、今は他の土地に根差し活躍している人々の紹介。スタートアップでこれからこんなことしていきたい!応援して欲しい!熱いおもいを伝える人々の場所としたいとスタートしました。 そんな私たちも応援して頂いています。この循環が大きくなってこの土地が豊かになりますように。次のクールの支援も始めました。シェアして頂けたら嬉しいです。

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