寒天屋四代目 佐々木 将太
恵那山が雪化粧を始める頃、山岡の冬は、地域特有の厳しい寒冷期へと一気に移り変わります。空気はぴんと張り詰めて冷たく、手袋越しでも指先がしびれる。そんな厳しい寒さが訪れると、私たち寒天職人にとって、一年でいちばん気の抜けない季節が始まります。
寒天づくりに適した土地はそう多くありません。凍りつく夜の冷気だけでなく、日中は風が乾き、降雨降雪が少なくカラッとした日が多い。——この「凍み」と「乾き」の両方が必要です。その点、恵那山を望む山岡の山間地は、昼夜の寒暖差が大きく、乾燥した晴れ間が続く。先人たちが百年前にここを選んだのは、まさに自然が味方をしてくれる土地だったからです。
寒天づくりは、海の恵みと山の気候が結ばれて生まれます。私たちが使う天草は、海で育つ海藻です。荒波にもまれた天草を遠くの港から運び、この山里で煮込み、濾し、型に流し込む。葦簀の上に手際良く並べたところてんを夜の山風にさらし、凍りつくのを待つ。夜が明ければ太陽の恵みによって解け、また夜に凍る。その繰り返しで水分が抜けていきます。2週間ほど天日干しをすることで、完全に乾燥した状態となり、無味無臭の自然な風合いで良質な細寒天ができあがります。
山岡の冬は厳しいですが、同時にこの土地にしか生まれない仕事の手応えを与えてくれます。細寒天づくりは手仕事が多いですが、その分手間のかけ甲斐があります。
恵那の寒天づくりが百年続いたのは、この自然条件に加え、もうひとつ大切な“結”があるからです。それは、日本の和菓子文化との結びつきです。練羊羹は寒天がなければ成り立ちません。伝統的に和菓子の原料として存在し、裏面表記に「細寒天」の表記を見つける度、この小さな山里の寒さが、日本の甘味文化を支えていることを実感します。
そしてもう一つの“結”は、未来へのつながりです。寒天は食物繊維が豊富で、カロリーや糖質はほとんどありません。食べることで腸を整え、身体の免疫力を高める報告もあります。百年続いたこの伝統が、これからの健康と暮らしを守る存在に結びつけばと願っています。
厳しい冬がつくる寒天は、恵那山麓の自然と人が結んだ結晶です。次の百年へ向けて、私は今年も山岡の冷たい風を受けながら、黙々と寒天づくりに向き合っています。
【恵那山のふもとからの寄稿】は恵那、中津川に移住定住して下さった人々のなりわいに感謝したい、応援したいというおもいがあります。また、ここで産まれた人々、今は他の土地に根差し活躍している人々の紹介。スタートアップでこれからこんなことしていきたい!応援して欲しい!熱いおもいを伝える人々の場所としたいとスタートしました。 そんな私たちも応援して頂いています。この循環が大きくなってこの土地が豊かになりますように。次のクールの支援も始めました。シェアして頂けたら嬉しいです。
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